この土地の栽培でしか出ない!独特の辛みと旨み-宮城県・大崎市の伝統野菜「鬼首菜」の復活と活用を目指す「ずなっこ隊」

宮城県の伝統野菜である「鬼首菜(おにこうべな)」。名前を聞くと、ちょっと怖そうですが、宮城県大崎市鳴子温泉鬼首地区(旧鳴子町鬼首地区)で栽培されており、由来は地名からきています。

鬼首地区は大崎市から車で一時間ほどの秋田の県境にほど近いところで、かつては「鬼切部(おにきりべ)」と呼ばれていました。他説に、坂上田村麻呂が蝦夷征伐で蝦夷の首領である大武丸を斬った時に、その首がこの地に落ちたので鬼首と呼んだという説がありますが、鬼首地区には鬼切部城跡があり、かつては鬼切辺村という名前であったことを伝えています。平安時代には、すでに陸奥国栗原郡にみられる歴史ある地名です。

この辺りは、各所から温泉が湧き出ており、硫黄、石英、石雲母、金・銀・銅の鉱産資源に恵まれていました。また、漆の生産にも富んでいたそうです。馬の産地としても有名で、豊かな地区だったと思われます。もしかしたら、あまり人を近づけないようにするために恐い地名にしていたのかもしれませんね。

そんな鬼首地区には、「鬼首菜」という伝統野菜があります。地元では「ずなっこ」と呼ばれる漬け菜の一種で、8月下旬頃に植え、11月上旬頃に収穫し、根・茎・葉のすべてが利用できるため、かつては冬場の貴重な野菜として、ほとんどの農家で自家採種・栽培されてきました。

もともとは大正時代に山形県最上地方から持ち込まれたものだそうで、鬼首地区以外の土地でも育つのですが、他の土地だと、なぜか辛みがなくなってしまうとのこと。鉱産資源の豊富な土地柄が影響しているのでしょうか。採種業者が研究しても、はっきりした理由は判明していないそうです。

独特の辛みと旨みがある美味しい「鬼首菜」ですが、冬でも様々な野菜が手に入るようになり、栽培は次第に廃れていきました。現在、栽培農家は2軒だけになってしまい、このままでは、近いうちに消滅してしまう危機的な状況です。

そんな中、地元では「鬼首菜」を復活させ、活用していこうという動きが起きています。プロジェクト鳴子CSAは、鬼首農地開発農業振興組合と協力し「鬼首塾」を開催しました。今年度は「鬼首菜の復活と活用」をテーマに3回の開催が予定されており、第一回が2018年10月31日に行われました。

「鬼首塾」では、鬼首菜の特徴である辛みや旨みの生まれる謎を科学的に解説したり、「鬼首菜(ずなっこ)隊」を組織し、栽培や調理・加工など活用に向けて活動する予定です。

その土地で栽培したものでなければ、辛み旨みがでないという不思議は、まさに地野菜ならではの魅力でもあります。ぜひ、復活した「鬼首菜」を鬼首地区の名産品として食べてみたいですね。

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